ー日和sideー

朝目覚めた私は昨日の出来事に少々焦りながらもまた、この部屋の豪華さにも驚きを隠せずにいた。


「おはよう。眠れたか?」

「は、はい!」

「緊張しなくていい。俺は幸矢だ。えっと…」

「はい…あ、名前ですね。今の名前を捨てたいので考えていただいてもいいですか?」

「捨てたい?」


私は自身の生い立ちを話す決心をし、大きく深呼吸する。


「はい。長くなりますよろしいですか?」

「あ、あぁ。」


ベッドから足だけを下ろした。そしてそのとなりに幸矢さんが座る。


「私の本名は沖澤 小南(おきざわ さな)です。沖澤財閥の後継者候補にすらなれなかった人間です。
一番末に生まれた私は後継者としての教育も受けることはできませんでした。一般の小学生として普通の学校に通いました。
家に帰っても誰一人私の言葉に耳を貸さず、兄や姉を見るんです。」