ー日和sideー

雨が降る公園の片隅で赤く血に染まる自分の手を、泣きながら何度も何度も地面に擦り付ける。


小学5年生の私は下校中に誘拐され、恐怖と不安におびえて誘拐犯が私に向けたナイフで私は…刺した、誘拐犯を。


どうやってナイフを奪ったのかなんて覚えてない。ただただ死にたくない一心で…


でも誘拐されたって誰ひとり私を探そうとなんてしない。だって私は愛されてなんかいないから。


やっぱり、私は死んだほうがよかったんだ…


まぶしい車のライトが公園の前で止まった。
そして誰かが私の方に歩いて来る。


「だ…れ…?」


高校生くらいの少年が前でしゃがみ、私の手をハンカチで拭き、自分がつけていた白い手袋を私の手につけた。


「辛いなら今は見なくていい。でも、忘れるのはダメだ。いつか向き合う準備ができたときにその傷と闘え。」


私はその瞬間に何かが溢れだした。
少年にしがみつき声を上げて泣いた。


「俺のとこに来るか?」


迷う理由があるはずもなく、私は静かにうなずいた。