それよりも私は琵琶を奏でるよりも蹴鞠をする方を好む、些か粗野な少女でございました。 邸の敷地内でやるとすぐに見つかり叱られるため、こうして鞠を手にこっそりと逃げ出そうとしておったのです。 私は近くに橘の良い薫りのする丘があるのを知っていました。 そこに行けば誰かと蹴鞠をして遊べるのでは、と 子供らしい根拠のない考えを胸に足を速めました。