そして、今。 牛車に揺られ参るは御所にございます。 私は今日、東宮様に入内致します。 御年十五…私と同い年の東宮様にとって私は、最初の后となるそうです。 だと言うのに、私はずっと“あの日”の思い出ばかりを想いながら参上してしまいました。 ――本当は、一度だけでも良いから橘の君にお逢いしたい。 東宮様に失礼だと分かっていても、感情を捨てた筈の私は東宮妃となるのを拒否したがっておりました。