「――サクロ?」

「え?」

「佐久路、清太くん?」



不意に誰かがサクロの名前を呼んだ。


私たちは同時に立ち止まったけれど、振り返るのはサクロの方が早かった。



「佐久路清太くんだよね? 泉幼稚園だった!」

「……」

「私、日代静だよ、うそ、すごい偶然!」



――七海ちゃんの同じ声が、また頭の奥で反芻する。



サクロを呼びとめたのは、隣のクラスの編入生、三つ編みのあの子だった。



……なんで、サクロのこと、知って……。



「――しっか?」

「そう、そう! 清太、幼稚園の頃は私のことそう呼んでた!」

「は、マジで!? さくら組?」

「そう、さくら組!」



お互いはしゃいだ声をあげる二人を、呆気にとられながら見ていると、興奮したテンションの彼女が、私たちとの距離を詰めて、すぐそばまで歩いてくる。