「編入生だよ。なんだっけな、名前、忘れた」

「へえ、知らなかった。可愛い子だねえ」

「2週間前に来たんだよ。ていうか、前の体育の時もいたじゃん」

「……」

「めい子はぼんやりしてるからな。……うっかりしてたらそのうち、佐久路のことも誰かに取られちゃうんじゃない? 例えば、それこそあの子とか」

「えっ! ……やだ……」

「何マジで泣きそうになってんのよ、冗談よ、冗談」



くすくすと笑う七海ちゃんに、ひどい、と唇を尖らせたところで、授業開始のチャイムが鳴る。


先生のいる場所へと集合すると、すぐに始まりのあいさつ、準備運動が始められる。



……すごいなあ、あの子。


この時期外れに編入してきたのに、もうクラスに馴染んでる。それこそ、この前に私が気付かなかったほどには。



“うっかりしてたらそのうち、佐久路のことも誰かに取られちゃうんじゃない? 例えば、それこそあの子とか”



七海ちゃんの先程のセリフを思い出して、ぶるっと体が震えた。寒さのせいかもしれないけれど。