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「――ね、サク、」



私の腕を力強く引いたまま、止まる気配のない彼の名前を呼ぼうとしたところで、いきなり立ち止まり、強引に壁に追い込まれた。


汐田くんや静ちゃんのいた図書室からは目いっぱい離れた、人気のない階段踊り場。


幼馴染が、整った顔立ちを見せつけるように私の顔に寄せてくる。


身長差があるせいか、息を呑むようなド迫力でびびって瞬きを繰り返した。



――どきどきする、けど。それ以前に怖い……!


何でか分からないけど、サクロ、怒ってる……! なんで!



「……」

「……」



言いたいことはお互いにたくさんあるはずなのに、サクロの雰囲気に呑まれたまま、何も言えない。



「……メーちゃん」

「は、っはい、……はい!」

「アイツと付き合うの?」



彼の言うアイツが、汐田くんであることはすぐに理解できた。