あまりに意外な質問に驚いて首を振れば、また笑った汐田くんが、そっか、と息を吐く。



……つ、付き合ってもいないのに、サクロのことつけてきたから、呆れてるんだろうか。


違うの、付き合ってないけど、……違わないけど、……誰にも言わないでほしい……!


――なんていう厚かましいお願いができるほど、私は勇気のある人間じゃない。



おどおどと目を泳がせて、乱れた前髪を軽く手ぐしで整えた後に、唇を噛んだ。



「……あの、さ」

「はっ、……はい……っ?」

「……」

「日代、うちの図書局入ったんだ」

「あ、そうなんだ……! 静ちゃん、素敵な、人だよ、ね、……ほんとに……」



自分で言ったくせに口にした途端悲しくなって、また泣きそうになる。


……私なんかよりよっぽどサクロにお似合いな女の子だ。ふさわしい女の子だ。



「またいつでもおいでよ」

「……え?」

「二人のことが気になるなら、俺を言い訳に使って良いよってこと」

「……?」

「言ってくれたら助けるよ」



そう言って汐田くんは穏やかに笑った。