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――ナオくんに、彼女ができた。



「おっはようメーちゃん」

「あ、サクロ。おはよー」



その噂はたったの一日で学年全体に広まり、何人かの女子生徒は泣かされたそうだ。


ナオくんは、学年で一番頭が良い秀才のくせに、優しいからすごくモテる。



「聞いた? ナオくんに彼女ができたんだって」

「知ってるよ、学年中で噂されてるもん」

「だよな!」



へへっと何故か嬉しそうに笑ったサクロは、自身のパーマがかかったふわふわの黒髪を私の首筋にこすりつけ、くすくすと笑った。


こちょばしい、と思いつつも、シャンプ―の良い匂いがするし、あったかいからされるがままにされておく。



それから、私の肩に頭を乗せ、ぎゅーっと長い腕で私を後ろから強く抱きしめたサクロは、

「メーちゃんがナオくんの彼女にならなくてよかった」

と、耳元で囁いた。