「そういや、お前高瀬先輩に寮に入るって言ってあんの?」
「いや、言ってない」
言ってないのは、俺が寮に入るか入らないかを迷っているから。
迷ったところで、これはもうほぼ決定事項だからどうしようもないんだけど。
もしかしたら入らなくて済むんじゃないかという、淡い期待をもつ俺がいる。
そんなこと、絶対にあり得ないのに。
そんなあり得ない期待をしてしまうほど、紗季から離れたくないんだ。
「まぁ、頑張れ!お前ほど高瀬先輩を想ってるやつはいねぇって」
俺だって、そう思うよ。
俺は小さなため息をついて、平らな鞄を肩に担ぎ直した。