「え…?」
空っぽになった、琉架の部屋だった。
「え…紗季、これってどういうこと…?」
棚の中の物も、クローゼットの中も、ベッドの毛布もないもない。
物が、何もなかった。
どう、して…?
朝来た時は、いつもと変わらなかったじゃない。
なんで…っ。
「で、電話してみる…っ…」
震える手で携帯の番号を押して耳に当てる。
でも聞こえて来たのは、無機質な声で話す女の人の声だけ。
電話も繋がらない。
どこ、行っちゃったの?
「紗季、おばさんは?」
つぐみの声にハッとする。
そうだ、お母さんなら何か知っているかもしれない。
今度はお母さんの携帯番号を押して、耳に当てる。
「…もしもし?紗季?」
少しして電話に出たお母さんに、ホッとした。
「ねぇ、琉架の部屋に物が何もないの。お母さん、何か知らない?」
早口気味に言った私に、お母さんは驚いたように言う。
「何言ってるの。琉架くん、今日から寮に入るって言ってたでしょう?
強豪校に入るから、会えるのは年に数回だけになって寂しいわねって。昨日話したじゃない」
なにそれ…。
そんなの、聞いてないよ…っ。
あまりのことに頭が真っ白になって。
どうやって通話を切ったのかすら覚えてなかった。
「紗季、紗季?どうしたの?」
「琉架…寮に入ったって……年に数回しか会えないってっ…」
「ウソ…」
呆然とする私の隣で、つぐみが「そういう事だったんだ」と、呟いた。
「そういう事って、なに?つぐみ何か知ってるの!?」
「紗季、落ち着いて。ちゃんと話すから」
私を落ち着かせるように、床にゆっくりと座らせられる。
「あのね、文化祭の時…」
文化祭?
「紗季が休憩に入ったすぐ後…琉架くん、私を訪ねて来たの」
つぐみに?
どうして…?
「その時、琉架くんが言ったの。
紗季をよろしくお願いしますって。紗季の恋を、叶えてやってくださいって…」
なにそれ…。
そんなの、
「そんなの、まるでっ…」
「うん、私も思ったよ。まるで離れていくみたいな言い方だなって。
どうしてそんなの言い方するのか聞いたんだけど……琉架くん、答えてくれなかった」
答えてくれなかった?
「ただ凄く悲しそうな、今にも泣きそうな顔して笑うだけだったの。
何も聞くなって、言われてる気がして。それ以上聞けなかった」
それからつぐみは、本当に離れて言っちゃうなんてね、と呟いた。
いつから、寮に入るって決まっていたの?
どうして教えてくれなかったの。
そんなに、私から離れたかったのっ…?
込み上げてくる涙を堪えていると
「これ、なんだろう?」
つぐみが机の下に落ちていた紙袋を見つけた。
きっと、机の引き出しから落ちて忘れて行ったんだろう。



