流架の卒業を祝った翌日、午前中からクラブの練習があるという流架を起こすために部屋に来た。
「流架、起きて。遅刻するよ」
「んー…」
なかなか起きようとしない流架を見て、毛布を引き剥がした。
「いい加減しっかりしなよ。高校生になるんでしょ」
「……」
「高校入ったら、もう起こしに来てあげないからね」
「……」
返事をしないままベッドから降りた流架は、練習着に袖を通す。
着古したジャージには小さな穴が空いていたり、糸がほつれたりしている箇所がある。
鞄の中に目を向ければ、傷だらけの脛当てが顔を出していた。
「流架、違うジャージないの?縫っておくから、そのジャージ貸して?」
脛当ては買わないとどうにもならないけど、ジャージなら私が直せる。
「…流架?」
反応しない流架にもう一度声をかけると、流架が真っ直ぐ私を見た。
…どうしたんだろう?
頭に?を浮かべながら流架の言葉を待つ。
「紗季」
「なに?」
はぁっと一息をついた流架は、私を見つめたまま口を開いた。
「紗季、好きだ」
真っ直ぐに見つめてくる流架から、なぜか目を反らせない。
これはいつもの冗談。
分かっているのに、どうしてすぐに言い返せないの?



