「ちょ、流架!?何言ってんだよっ」
慶介が困惑した顔で言う。
悪い、慶介。
応援してくれてたお前には悪いけど、俺にはもう、こうするしか道はなかったんだ。
「流架くん、どうして?どうしてそんな、今すぐ紗季から離れていくみたいな言い方…」
戸惑いながら言うつぐみさんに、俺は笑って返すことしかできない。
紗季が好きだから、なんて言えない。
そんなこと言ったら、つぐみさんを困らせることになる。
俺に同情してしまうから。
「つぐみさんは、紗季の味方でいて下さい。それだけ言いたかったんで…じゃあ、帰ります」
そう言って背を向けて歩き出す。
これ以上、平静を保っているのが辛かった。
「流架…」
「…っ……わり…っ…」
涙を堪えることは、できそうになかったから。
なんか俺、最近泣いてばっかだ…。
カッコわりぃ…。
好きなら相手の幸せを願え
そんなこと、誰が言い始たんだろう。
本当にその通りだとも思うけれど、そんなこと本心から願えるわけがないとも思う。
好きな人が、自分ではない人の元で幸せになることを願うことと同じであって。
そこには、自分の存在は邪魔でしかなくて。
2人が幸せになるのを邪魔してしまう自分は消えるしかない。
気持ちを消せないままなら、もう関わることも許されない。
好きだという気持ちの行き場をなくして苦しい。
幸せになるであろう2人を想像して辛い。
もう側にいることができなくて悲しい。
俺では紗季を幸せにできなくて悔しい。
そんな気持ちばかりが俺の心を埋め尽くす。
でも、そんなことばかり思っていても仕方ない。
「大丈夫か?」
「あぁ」
好きだという想いを消すことはできないけれど。
いつか、あの時は本当に好きだったと。
未来の自分が笑えるように。
幸せになった紗季の前で、笑っていられるように。
俺は…。