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目が覚める
また知らない部屋
知らない風景
もう嫌だ
どこが夢?
どこが現実?
ここはどこだ?
俺は…
「ジャン」
「!」
振り向くとマルコがいた
さっきの光景がよみがえる
あの顔がまだ脳裏にこびりついている
「ひっ…」
思わず後ずさる
「ジャン…?」
心配そうに見ている
はずなのに
怖い
「い、やだ…来ないでくれ…っ!」
あの顔が
笑みが
目が
目の前のマルコと重なる
どっちが現実か分からなくなる
いや、そもそも今も現実なのか?
このマルコも偽物?
さっきのマルコが偽物だという証拠は?
--マルコはあんな事しない?
しない、絶対しない!
--本当に?
しないに決まってる!!
--それは願望じゃないのか?
--絶対にしない根拠がどこにある?
--するかもしれない、だろ?
しない!!マルコはそんな事しない!!!
--何があっても?
しない…しないよ…な…?
「ジャン?大丈夫、僕以外誰もいないよ」
だから怖い
さっきのマルコと違うと分かっていても
その証拠が、
根拠がないから怖い
俺の思い込みかもしれない
さっきのマルコかもしれない
いくら自問自答を繰り返しても
答えは出なくて
目の前のマルコは心配そうに
悲しそうな顔でこちらを見る
その顔がどうしても信用出来なくて
恐怖しか感じない
「く、来るな…い、いやだ…」
「大丈夫だよ」
俺を心配させないように微笑みながら
歩み寄ってくる
それが逆効果で
余計にフラッシュバックする
「その顔で寄るな…!!」
ゆっくり
ゆっくりと近付いてくる
あの夢と同じように
そうだ
これも夢だ
夢なんだ
夢!
夢!!
夢!!!
夢!!!!
覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ…!!
「ジャン」
いつの間にかマルコが目の前にいた
「う、うわぁあぁぁあぁ!!」
思い切り腕をふる
その腕がマルコの顔に当たり体勢が崩れた
ゴンッ!!!
「っ…」
鈍い音が響く
側にあった机の角に頭をぶつけたらしい
マルコの頭から流れた血が
床に滴り落ちる
そんな事気にする余裕もなく
俺はその場にうずくまり頭を抱える

その時、突然抱き締められた
「や、やめろっ!!離れろ!!!」
その腕を振りほどこうと必死に暴れる
解けない
それどころか力が強まる
殺される…!
「や、やめ…こ、殺さないでくれ…っ!」
「ジャン、落ち着いて
僕はそんな事しない
《約束》したじゃないか」
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