「死んだはずのサイがまだこの世界にいるのは……何か大きな、やり残したことがあるからじゃないのかな?」
「やり残したこと?」
「うん…」
私の言葉に、サイの瞳が微かに見開かれる。
「それって…未練ってやつ?」
簡単に言えば、そうだ。
普通死んだ人って、成仏するものでしょ?
それなのに、サイは「幽霊」となって未だこの世界に姿を現した。
と、いうことは…だ。
何か死んでも死にきれないような…心に残るような「後悔」というものが、サイの心にはあるんじゃないのかな?
だけど、正直よくわからない。
死んだ後の人間の末路なんて、わかる人は絶対にいないはずだから…。
「死んだ人は成仏する」なんて私の考えも、一般的にはそう考えられているだけで、本当にそれが真実なのかは断言することはできない。
未練があろうがなかろうが、サイみたいに一定の期間はまだこの世界にいるのが当然なのかもしれないし…。
「未練、かあ…」
不意にサイが言葉を漏らしたので、私は自然と隣を見上げた。
綺麗な横顔に…目は遠くの方へと向けられている。

