「奈々子が唯一認めた親友なのに、



涙って、つまんない人間なのな」






―バチン!!




大きな音が……その場に響く。


「あんたに何がわかんの!?」


私の手が、サイの頬を平手打ちしたのだ。


はじめてだった…。誰かを殴ったのは。




「サイに私の気持ちなんて、わかるわけないでしょ!?」


「涙…」


赤くなった頬を押さえることせず、サイが真っ直ぐに私を見る。


「今みたいにさ…自分の本音、一回でいいからぶつけてみればいいじゃん。話したってどうせ無駄、そう思ってあきらめてるんでしょ」


「……」


何も言い返すことができないのは…


サイの言葉が、本当のことだから…。


「だったらさ、無謀だとか考えんのはやれることやってからにしなよ。じゃなきゃ…涙、一生親の人形だよ?」


「…るさい…うるさいんだよバカ!!」


―ボス!!


ベッドに置いてあったクッションを……私は思い切りサイへと投げつける。


だけど、それがサイに命中することはなくて…


私や物には触れるのに、クッションは体に当たることなくすり抜ける。


一体どうなってるっていうのよ…


サイの言っていることは間違っていない。


確かに私は、自分の本音をちゃんと母にぶつけたことはなくて…


どうせわかってくれるはずないと…いつも諦めてた。たったの一言二言で…




「死んだ人間のくせに…」


やる前から逃げている自分が、一番最低なはずなのに…


気が付くと、私は…