「涙のことだったのかな?奈々子が話していたのは…」
家までの帰路を……私はサイと並んで歩いていた。
「え?」
「話していた」って…?
不思議そうな顔を浮かべる私に、隣のサイはフッと笑った。
「ほら、奈々子って男女関係なくいろんなヤツから好かれたろ?だから、特定の友人はいないって聞いてたんだけど…」
「…。」
私は黙って、サイの言葉に耳を傾ける。
「でも、事故に遭う何日か前に初めて聞いたんだ。自分にはひとりだけ、幼稚園のころからの大切な友達がいるって……それって、たぶん涙のことだったんだな」
あー、私と同じだ。
「私も、初めて奈々子に彼氏がいたこと知ったの、つい最近だよ」
「ははっ」
私の言葉に、サイは声を上げて笑った。
「あいつ、オレたちに話してないこと多すぎだな!」
楽しそうな笑顔を浮かべながら、奈々子のことを話すサイに胸がギュッと締め付けられる。
この人もまた……奈々子のことが本当に好きだったのだと……
なんて純粋なんだろう、サイと奈々子は。
不意にそう思った。