「涙って、可愛いのな」
「は、はあ!?」
初対面の女子になに言ってんの、この人!!
恥ずかしくて、思わずサイのカッターシャツの襟を思い切りつかむ。
「だ、誰にでもそんなこと言ってんじゃないでしょうね!?」
「えー、言ってないよ?」
ウソつけや!!
やんわりとそんな風に笑われても、信憑性なんて全くないんですけど…。
こうやって、何十人もの女の子を落としているんだろうか?
「それにしても気性が荒いなー、涙は。全然名前と合ってないし」
「……どういった意味でしょうか?」
「そのまんまの意味ですけど?『涙』じゃなくて、『きしょうあら子』とかのほうが良かったんじゃない?」
「なにおー!?」
長いわ!!
…って、今はそんなくだらないことを言い合っている場合じゃない。
彼には…サイには、聞きたいことがたくさんあるんだった。

