「…と、ここでいいかな」
ふと、私は歩みを止める。
到着したのは、家の近所でもある小さな公園。
公園と言ってもつい数年前に遊具は全て撤去され、今では草が多少生えているだけの野原になってしまった。
唯一存在しているのは、端にちょこんと設置された古いベンチだけ。
ここなら、昼でも誰も来ないだろうと…
私は彼を連れてここにやってきたのだった。
じっくりと、話をするために…。
よし。
「座ろうか」
敷地に足を踏み入れ、ふたり並んで古いベンチに腰かける。
聞きたいことが、山のようにたくさんある。
まずは、どうやって空から降ってきたのか…質問を投げかけようとしたときだった。
「夜々木 涙か…」
突然…私の顔をじっと見つめながら、つぶやくように彼は言った。
「じゃあ、涙だな」
「え?」

