「女のくせに、るいなんて変わった名前なのなー」
お前は小学生か。子どもみたいな言い方に思わず突っ込んでしまった。
こんな会話ができてしまうくらい、最初に比べたら、今はなんとか落ち着いている。
考えてみれば、人間が空から飛んでくるなんてありえない。どんなトリックを使ったのか……今からそれを問い詰めるつもりだ。
青い瞳の色だって、きっとカラーコンタクトでも入れてんでしょ?
心の中では悪態つきながらも、彼の言葉に決してショックを受けたわけではない。
夜々木 涙……
自分でも変わった名前だってことはわかっている。
親も親で、なんでこんな名前をつけたのか…
世間体を気にする人たちだからこそ、そこらへんにたくさんあるような、普通の名前をつけると思っていたけど…
涙のるいなんて……今まで何百回も思っていたけど、なんて悲しい名前なんだろう。
親がどうしてこんな名前を私につけたのか…気になっていたけど、それを知る機会は、きっと一生ないと思う。
「なあ、漢字はどう書くの?種類の『類』?それとも、最近昼ドラではいってた主人公の夫の小姑の妹の『高木 ルイ子』のるい?」
いや、知らんし。
誰よ、たかぎ るいこって…。
「たぶん違うかな…。なみだ、なみだって書いてるいって読むの。」
「へえ」
彼と出会ったのは、つい数時間前。
見た目は美少年だけどどこか謎めいているというか、堅実そうなのに…
こやつは少し変わっているということが今、判明した。

