親友の彼氏なのに、名前も顔も知らなくて。
名前も顔も知らないのに、親友の彼氏で。
近いようで遠い現実。
遠いようで近い現実。
せっかく好きになった、大切な人を亡くしてしまったのだ。体調を崩しても仕方ないのかもしれない…。
ピタリと、思わず保健室へ向かおうとした足を止める。
今から行っても…次の授業には間に合わない。
奈々子のことは心配だけど、もし彼女のとこに行くのなら昼休みが妥当だろう。それに……いろいろと、ひとりで受け止めなきゃいけない事実もあるだろうし。
仕方ないよね…
重い足取りで、私は自分の教室へと歩いて行った。
戻ってきた私を、教室の隅に立っていた翔子と愛姫がチラチラと見てくる。
当然、そこには咲乃の姿もいた。
「なに話してんのー?」
いつもなら、そう言って真っ先にその中へ入っていけるのだけど…
「はあ…」
小さく息を吐いて、自分の席へと向かう。
話しているのは……私の悪口といったところだろうか?

