拳を爪が食い込むくらい、強く握る。
本当に奈々子の彼氏は死んだの…?
「それじゃ、今日も一日がんばれ!」
そこでホームルーム終わりのチャイムは鳴った。
急いで席から立ち上がる。後ろから咲乃の視線を感じたけど、無視して奈々子のクラスである4組へと向かう。
だが、たどり着いた4組の教室に……奈々子の姿はなかった。
イスはきちんと机の中に収めらていて、あるのは黒革のサブバッグと筆箱だけ。
奈々子…?
「あっ、ねえ!」
偶然教室の中をのぞき込む、自分の目の前を通った女の子を呼び止める。
「はい?」
「奈々子、どこに行ったかわかる?」
「ああ…常盤さんなら、体調が悪いってさっき保健室に行ったよ」
保健室…
「そっか……ありがとう」
私は廊下に出た。
奈々子は……本当にその人のことが好きだったんだ…。
そうだよね。前に言ってたもん。「可愛いのに、なんで彼氏作らないの?」って聞いたら、「私は本気で好きになった人とじゃなきゃ付き合わない」って…。
あの奈々子が初めて好きになり、
そして、初めて付き合った人だったのに…

