天使が舞い降りる。




「あ、はい」


愛姫が、そこで初めて先生がいたことに気づいたような声を上げた。


ふたりもまた、異様な空気に包まれながらも自分たちの席へと戻って行く。


私と咲乃だけが……しばらくの間、お互いを強く睨み合っていた。






「というわけで、今日は中野先生が休みになる。授業変更があるから、係のやつは職員室の連絡掲示板をしっかり見ておくように」


ホームルームが始まっても、私と咲乃が会話することはなかった。


いつもなら雑談の一言でもするのに…


しばらくどうでもいい、担任の話は続く。


「それとだな…」


コホン、とそこで小さく咳払いをする担任。


「今朝のニュースで、もしかしたら知っているやつもいると思うが、一昨日の夜、西高の生徒が交通事故で亡くなった」


私は顔を上げた。


「うそ、まじで!?」


「知らなかったんだけど…」


「バカ、ニュース見ろよ」


先ほどの空気など忘れ、ザワザワと騒がしくなる教室内。


「今朝方、学校に警察から連絡があってだな。土手先の踏切付近はしばらく通行禁止になるそうだ。みんなもくれぐれも、事故には気を付けるようにするんだぞ!」