―ガタッ!
気付くと私は、席から立ち上がっていた。
強く握り締めた拳がワナワナと震える。
100歩譲ったとしても……奈々子の悪口だけは、どうしても許せなかった。
賑やかだったはずのクラスが一気に静まり返り、みんな驚いたようにこっちを見てる。だけど、それ以上に目を見開いていたのは…目の前の3人だった。
無理もない。私がこんなふうに周りの目を気にせず大きな声を出したのは、初めてのことだし…。
「はっ……なによ、涙……」
一番はじめに固まった表情を崩したのは……咲乃だった。
「なにいきなりマジ切れしてんの?意味わかんないんだけど…」
口元を引きつらせる咲乃を、私は睨みつけるように見下ろしていた。
「なんだ、ケンカか?」
ただならなぬ私たちの雰囲気に、クラスのみんながざわつき始めたときだった。
―ガラッ
「おーら席つけー、ホームルーム始めるぞー」
勢いよく開いた教室のドア。同時にクラスの担任がズカズカと中に入ってくる。
異様な空気を残したまま、ガタガタとそれぞれの席に着き始めるクラスメート。なにも知らない先生は不思議そうな表情を浮かべる。
「ん?前園に斉藤、大事な話があるんだからお前らも早く席に座りなさい」

