小さい頃から一度も、奈々子が人前で泣き顔を見せたことはなかった。
さっきのあの腫れた目は…もしかして…
「つうか自業自得だよねー」
咲乃の言葉に顔を上げる。
自業自得…?
「男子から少しチヤホヤされてるからってさあ、大人しそうな顔して、常盤のやつ絶対自分のこと可愛いとか思ってるよ。調子こいた天罰だよね、天罰!」
「あんた性格悪すぎ!」
翔子が大きな声を出して笑う。
私は信じられないような目で咲乃を見つめた。
奈々子が…いつ調子に乗ったっていうの。
知ってるよ?咲乃が奈々子のこと、あまりいいように思っていないことは…
過去に好きになった人を2度も取られてしまったんだ。怒る気持ちは十分にわかる。だけど…
それは、奈々子のせいじゃないよね?奈々子は何も悪くないよね?
なら、どうして…人の不幸をそんなふうに笑えるの?
自分の中で…何かが音を立てて崩れていった。
「マジざまあみろって感じ!」
「黙れ!!」

