「4組のさあ、常盤(ときわ)奈々子っていんじゃん?」
―どきっ
一瞬、心臓が大きく跳ねた。
どうせまた、私が知らない誰かの悪口かと思っていたのに…
咲乃の口から出てきたのは、先ほどまで一緒にいた私の友達の名前。
「あー知ってる知ってる。アイドル並みに可愛いとかって、男子が騒いでる子でしょ?前一回、廊下ですれ違ったわ」
と翔子。
「その子がどうしたの?」
続いて手鏡を覗き込んでいた愛姫が咲乃へと問いかける。
「涙は知ってる?」
「ああ、うん…まあ」
私は言葉を濁しながら頷いた。
この3人には、私が奈々子の友達だということは話していない。
別に言う必要のあることでもないって思っていたし、それに…
咲乃が、奈々子に決して好意を抱いていないことを、知っていたから。
実は過去に2度、咲乃が本気で好きになった男が、奈々子に告白したらしいのだ。
咲乃が本気で好きになっただけあって、ふたりともそこそこのイケメン。
確かひとりは弓道部の主将で、もうひとりはサッカー部の副キャプテンとかいう人だった。
奈々子は元より、告白した男子たちもなかなか校内では有名な人たちだったから、その手の噂はすぐに広まった。

