―『行こう、涙。


オレの……最後の未練を解消しに行く』




最後の未練って……なに?




奈々子に会って、想いを聞いて、伝えて……


それがサイの選んだ、「最後の未練」だったんじゃないの……?


「急ごう、涙!」


慌てた様子でサイが私の手を引く。同時に気づいた。


サイの手が……消えかけている……


手だけじゃない。顔を上げると、サイの体自身が消えようとしているのだ。


うっすらと、目の前の景色がサイの体を通して見えている。




「サイ……!体が……っ」


「そんなことどうでもいい!」


私の頬を、涙が伝っていく。





サイが、消える……





最後だったはずの未練を解消して……


サイが、消えようとしている。