「やり残したことなんて、いっぱいあるよ?
会えるなら、家族だけじゃなく、学校の友達にも会いたいし、バイト先でよくしてくれた先輩、店長とかにも会いたいし。けど…
その中で、全部の人に会うのは……きっと無理なんだ」
「……時間がないってこと?」
サイが、本当に私の目の前から消える。
「意識が……なんかすげえ朦朧とするんだよ。どこかに引っ張られるみたいに……たぶん、もう
時間がない」
涙が出そうになるのを必死に我慢した。
あとひとりに出会えば……サイはもう、本当にいなくなるかもしれない。
「やれること」は限られていた。
サイは死にたくて死んだわけじゃないのに……神様も意地悪だ。どうしてもっと、時間をくれなかったの?
「じゃあ、尚更じゃん」
奈々子にあって成仏するのが先か、
なにもせず意識がなくなってしまうのが先か……
「尚更、奈々子に会いにいかないと……!」

