「あ…おはよう、涙」
そう言って笑う表情もかなり弱々しい…。
「ちょっと、いろいろあって……ごめん。涙には、そのうち話すから……」
「あ……うん。無理、しないでね?」
「ありがと。先、行くね」
立ち止まっている私をそのまま残して、足早に歩いて行く奈々子。そして、一番近くの教室へと入っていってしまった。
なんか…
深く追求されるのを拒んでいるみたいだったけど…
奈々子とは幼い頃からの親友だった。
いつも砂場でひとり遊びをしていて、今以上に内気な性格だった私に、初めて「一緒に遊ぼう」と声をかけてくれたのが奈々子だったのだ。
可愛くて美人で、気立てが良くて優しくて…男女問わず人気者な自慢の親友。
平凡な私が、学校一のマドンナの友達なんて、誰も思わないだろうけどさ…
生まれて初めて見た、奈々子の泣き顔が心配だったけど…
正直、どうしようもできない。
「そのうち話す」と言ってくれたんだから、そのトキとやらを、今は黙って待つしかない。
大丈夫だ。
奈々子は、ウソはつかない人だから…。

