「だから、もういいんだ……。


愛されなかったわけじゃないけど、特別愛されたわけでもない。あの人たちにとって……オレと奏は、いてもいなくてもどっちでもいい存在だったんだよ。


お互いに恋愛感情なんてなかった。だから、ふたりの子どもがいても平然と離婚できたんだろうし…」


「……」


「わかったろ?オレが父親はもちろん、母親に会う必要はない。どうせ、オレが死んだってなんとも思ってないに決まってるんだし……」


言葉ではそう言って、顔ではなんてことないように笑って見えるけど……


私には……


「そんなの……絶対にウソだ」


サイが、泣いているように感じた……。


「……涙?」


「そんなの……絶対にウソだよ!!」


「涙!」


私はサイの手をつかみ、無理矢理前へと進んでいく。


サイのお母さんが、ふたりのことを何とも思っていなかったなんて……絶対にウソだ。


だって……


「奏ちゃん、言ってたもん!!サイが死んでから、お母さん、布団でずっと泣いてるって!!」


「え……」


サイの目が、驚いたように見開かれる。