目の前の女の子の口から出てきた、「奈々子」の名前に驚いた。
「奏ちゃん、奈々子を知っているの?」
「うん!だっていっぱい遊んでもらったもん!」
「へえ、そっか」
「よくサイ兄ちゃんと3人で手をつないでね、お散歩もしたの!奏が真ん中で!」
屈託のないその笑みと言葉に……心臓が大きく跳ねあがった。
同時に頭の中に浮かんだのは、重なり合う3つの影…。だけど、その影が重なり合う日は……もう二度と来ない。
「お姉ちゃん、なまえはなんていうの?」
「え?ああ……涙だよ」
「るいお姉ちゃん、一緒にあそぼう!」
奏ちゃんに手を強く引っ張られる。まだお昼だし……遊んであげられる時間はいっぱいある。
「うん、いいよ」
「やったー!」
嬉しそうに喜ぶ奏ちゃんに、公園の敷地内へと連れていかれようとしたときだった。
「涙」
同時に反対の腕を背後からつかまれる。

