天使が舞い降りる。




昨夜、よほど調子が良かったのか、時間なんて忘れるくらい小説に打ち込んでしまい…


『うげっ、もうこんな時間!?』


と慌ててベッドに入ったのが夜中の3時だった。だけど、最悪なことに、パソコンの光で目が冴えていたのか、完全に寝付けたのはその2時間後の5時。


「起きたのは7時だから、2時間しか寝てないんだな~…へへっ」


もはや無駄に笑いが込み上げるほど思考回路がおかしくなっている。


家帰ったら、とりあえず夕飯まで仮眠とろう…。


そう心に決め、教室までの廊下を歩いていたときだった。


「ふわあ~……んっ」


本日何度目かの、出かけていた大きな欠伸がピタリと止まる。


楽しそうにワイワイ騒いでいる他の生徒に紛れながら、自分の数メートル先を歩いているひとりの女子生徒。


あの艶やかな髪を揺らした後ろ姿は…


「奈々子!」


間違いない。友人の奈々子だ。


実はあの小説サイトを紹介してくれた人というのが彼女だったりする。


「あ、あれ…?」


だけど、普通に聞こえるくらい名前を呼んだはずなのに…


なぜかこちらを振り返らない背中。