なんとも思ってないふりをしながら、小銭がなかったので千円札を販売機に投入する。
「どの切符買えばいいの?」
私の言葉に、サイが無言である切符の画面を指さした。
「えっ!?」
驚いた私は思わず後ろを振り返る。だってサイが示したのは……この駅から一番遠い、最終の駅へのお高い切符だったから。
「謝んないでよ」なんて言わなきゃよかった……
振り返った視線の先で、サイはニコニコと笑っていたのだ。
「やっぱり謝れ!!」
「ええっ!?」
切符を買い、電車はすぐに来た。
「行こう、涙」
サイが、私の手を引く。
電車に乗り込んだ私たちは、適当な席に腰掛けた。
最終の駅に到着するまでの間、お互い言葉を発することはなくて……
『次はー、駒木駅ー、駒木駅でございます』
最初は、かろうじて聞いたことのある駅のアナウンスが流れていたけど……だんだんそれが、まったく知らないものに変わっていく。

