天使が舞い降りる。




―日曜日。





全身鏡に映る自分の姿を見つめながら、私は考えていた。


自分の家に行きたいと…


家族に会いに行きたいと言ったときの、サイの切なげな表情を思い浮かべながら…




どうして、あんな哀しい表情をしていたんだろう。


確か妹と、離婚した母親とアパートで暮らしていたというのは聞いていたけど…


家族と、あまりうまくいっていなかったのだろうか?


でも、もしそうなら、奈々子よりも優先してそっちを選んだのはなぜ?会いに行くのはなぜ?


『むしろ……誰かにそばにいてほしいから』


3日ほど前のサイの言葉が、再び脳裏によみがえったときだった。





「涙ー、まだー?」


「あ……」


ドアの向こうの、サイの言葉にハッとする。


そういえば着替えするのに待たせてたんだった……。


「ごめーん、今行くー」


私は携帯に財布、最小限の荷物をつめたバッグを肩に下げると、部屋のドアを開けた。