そっか、この子は･･･
「や、あの･･･ちょっとトイレに」
動揺を隠しきれずに席を立って教室を出る。
早目に来たことを後悔してる。
あの子は、翔馬だ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
入学式もHRも終わって、あとは帰るだけ。
私は雪乃と翔馬を待つために教室にいる
つもりだったんだけど、変更して2組の前にいる。
思ったより保護者の人数が少なくてホッとした。
「馬越翔馬。あいつ、翔馬やろ」
すぐそばで良太の声がして俯いていた顔を上げた。
入学式では一人一人名前を呼ばれたから
良太だけじゃなくて雪乃も気付いたと思う。
「翔馬の家に馬越さんって人が引っ越して来た」
私はそれだけ言うのに精一杯。
あれは翔馬が戻って来ただけだったんだ。
「衣麻、良太」
雪乃にいつもの元気はない。
理由は分かってるし、敢えて言うつもりもない。
ただ、私は明日からどうしたものかと考えてる。
