衣麻と僕と俺と私




さっきハンカチを出した時に落ちたんだ。


衣里ちゃんが修学旅行のお土産にくれて大事にしてたのに。


良かった、拾ってもらえて。


初対面で緊張するし男子だけどお礼を言わなきゃ。


「あ、あの・・・ストラップありがとうございます」


勇気を振り絞って出した声は思ったより細かった。


だけど前の席の子はすぐに気付いて


こっちを見てくれた。


「ん?やっぱりあんたのだった?良かった。


あ、ちゃんと宿題してきた?」


初対面なのに人懐っこく話す感じと


顔に見覚えがある気がする。


しかも“宿題してきた?”って言葉に懐かしさを感じる。


まさかね、そんなはずはないのに。


「あ、宿題ならちゃんと・・・ほら!」


私はさっきまでの緊張も忘れて鞄から宿題を出して見せる。


するとその子は優しく微笑んで、更に懐かしくなる。


どうしてだろう。


初対面のはずなのに。


「偉い。頑張ったね、衣麻」


「・・・え」


さっきまでの疑問が合わさって確信に変わる。