衣麻と僕と俺と私




衣麻より早く高校を卒業した衣里ちゃんにも


『早く仲直りしいよ?』


って今朝言われて家を出た。


やっぱ、衣麻ってダメダメだ。


大切な幼なじみの関係を崩して


衣里ちゃんにまで心配かけて。


挙句の果てにはこのまま卒業ってなりそうだし。


「越智さん、おはよう」


最近はすっかり耳に馴染んだこの声は、高屋くんのもの。


「おはよう」


「越智さん、卒業式が終わって部活の方に行く前


ちょっとだけ時間ちょうだい?」


さっきは顔も見ずに挨拶をしたけど


今度は顔を見るしかなくなった。


だって、少し悲しそうな声をしてたから。


「ちょっとだけなら」


衣麻がそういうと、高屋くんは“ありがとう”と席に着いた。


正直、キツい。


今のこの状況で


雪乃たちとの距離が更に開いちゃいそうだし。


そうは思ったけど特に有効な解決策は思い浮かばず


衣麻は窓を閉めて席に座った。