衣麻と僕と俺と私




「さっき、真実から電話がかかってきてね


『衣麻が男の子と一緒におって告白されよるっぽかったんですけど


なんか雰囲気が微妙っていうか・・・


後で衣麻泣きそうやったんで』


って言うもんやけんね」


あ、近くのお弁当屋さんに高校生らしい人がいたのって


もしかして真実先輩だったのかも。


今になって少し冷静になってくる。


「衣麻やったら告白くらい何回もされとるやろし


いつもと違ったんかなぁって思ってね」


瑛太も衣里ちゃんも良太も


どうして衣麻の周りには勘の鋭い人が集まってるんだろう。


「内容的には・・・翔馬の代わりになるって意味やと思う」


おうどんを食べ終わった衣麻は少しずつ話すことにした。


高屋くんは翔馬のことを知らないし、有り得ないと思った。


だけど、高屋くんは何となく翔馬の“存在”には気づいてる。


きっと、衣麻が話してもびっくりはしない。


「衣麻は、翔馬は翔馬でしかないと思うけん、そんなん望んでない。


でも、それを心の中でどう整理したらええんか分からん」


こんなに悩んだのは久しぶりかもしれない。


1年生で初めて告白された時は良太がきいてくれて楽になったし


それ以外でここまで悩むことは特になかった。


耳のことで時々傷つくことはあったけど。


だから、心が戸惑ってる。


「そっか」


しばらく考えるような仕草をした後


衣里ちゃんは衣麻の肩を抱き寄せてそう言った。