衣麻と僕と俺と私




衣里ちゃんが高校生になった時に与えられた個室。


何故だか未だに衣里ちゃんがノックをして入って来ることに慣れない。


「衣麻、瑛太が心配しよったよ?」


時刻は13時半。


きっと瑛太は友達と遊びに行ったんだと思う。


衣里ちゃんはお盆にご飯を乗せて持ってきてくれた。


「ほら、お腹空いたやろ?


お母さんは瑛斗連れて買い物行ったけん


暫く戻って来んよ」


多分“泣いても良いよ”って意味で言ってくれたんだと思う。


だけど、衣里ちゃんごめん。


衣麻は泣けないんだ。


「いただきます」


心はずっしりと重くてもお腹は空く。


多分衣里ちゃんが用意してくれたおうどん。


がっつりしたものじゃなくて良かった、食べれる。


「いつもと違う告白でもされた?」


「・・・・・・」


ただおうどんを食べる手を止めて衣里ちゃんを見つめるだけで


声を出して反応することはできなかった。


だって、あまりにも合ってるから。