確かにお母さんと衣里ちゃんが言ってて
瑛太に早く帰るようにお願いしてた。
「そうやったね、忘れとった」
いつもの調子でグサッと言われるんだろうな。
そう思いながらヘラっと笑った、と思う。
「・・・衣麻ねぇ、何かあった?」
階段に右足を掛けた所での瑛太の言葉。
いつもなら“何で?何もないよ!”って笑えるのに
今日は何故だか振り向くことすらできない。
「何か、変。帰るんもみんなと別々やったみたいやし」
こういう日の帰り際は確かに瑛太と遭遇してたっけ。
きっと、雪乃たちが遭遇したんだ。
「ユキちゃんは委員会って言いよったけど・・・ほんと?」
こういう時に限って右耳にすんなり入ってくる瑛太の声。
階段が反対側だったら聞こえなかったかもしれないのに。
「委員会は、中止になった」
涙がこみ上げて来るのを感じて、階段を駆け上がった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
――――コンコン
部屋のドアがノックされて
“入るよ?”って衣里ちゃんの声がした。


