衣麻と僕と俺と私




「あのね、越智さん」


自転車に跨ろうとして上げた右足を下ろすことになってしまった。


だって、高屋くんはあまりにも真剣な顔をしてるんだもん。


この顔、何回か見た。


自慢じゃないけど1年の頃あら何人かに告白されてきたから。


その度に見た、真剣な顔。


自惚れかもしれないけど、また傷つけなきゃいけないんだ。


「俺、越智さんのことが好きなんだ」


真剣な顔で言って


すぐに顔を真っ赤にして俯いた高屋くん。


背が高くて


普段はクールな印象の高屋くんを見てるから驚いた。


なんていうか、ギャップっていうのかな。


いつもとは違う一面を見た感じがする。


「多分、越智さんは誰に告られても断るんやろ?」


「え?」


こんなこと言われたのは初めてで


心よりも体が先に反応した。


もしかして、見破られてる?


「俺、入学した時から2人、気になる子がおったんよ。


1人は菅で、もう1人が越智さん」