衣麻と僕と俺と私




「・・・うん。じゃあ、翔馬の見せて。


合格もらっとんやろ?」


「は?・・・言うと思ったけど。


放課後までに書けんかったら見せちゃる」


呆れたように笑って、衣麻の隣の席に座った。


放課後、か。多分、無理だろうな。


だって衣麻、こういう作業すごく苦手なんだもん。


はぁ・・・。


ため息をついて、教室を見渡す。


クラスメイト兼同級生は全員で7人。


女子2人に男子5人と、バランスは変だけどみんな仲良し。


みんなとは幼稚園で出会ってそれからずっと一緒だけど


翔馬は特別。


家が数メートルしか離れてないこともあって


幼稚園に入る前からずっと一緒にいた。


だから、右耳に補聴器をつけてない時代の衣麻を知ってるのは翔馬だけ。


記憶にはないけど、きいた話では3歳になる直前に高熱が出て


耳に障害が残った。


右耳は補聴器をつけたら聞こえるようにはなったけど


左耳はどう治療しても聞こえるようにはならなかった。