衣麻と僕と俺と私




だけど、次の瞬間衣麻の左腕が強い力で引っ張られた。


「い・・・っ」


あまりの驚きにろくに声も出せずに相手を確認すると


同級生の千葉さん。


その顔は普段、お人形さんみたいに可愛らしいのに


今はすごく怒ったような表情をしている。


衣麻、何かしたっけ。


「越智さん、無視せんといてくれる?」


「え、無視?」


千葉さんは可愛くて純粋で優しい心の持ち主。


だから、そんな千葉さんが嘘をつくとは思えない。


ってことは、衣麻が無視してしまったってことになる。


「あ・・・ごめん。左側やと聞こえにくくて」


久々に感じる胸の痛み。


プラス、まだ教室に残ってるクラスメイトの視線が痛い。


中学校に入学してから何度かこういうことはあった。


だけどそれのほとんどは1年生の間だけで


最近は落ち着いてたのに。


3年目になってまたあるなんて思わなかった。


「ごめんね、千葉さん。


衣麻、無視しようと思った訳やなくて・・・」