衣麻と僕と俺と私




だけど、簡単に口にしてはいけないような気がして。


「はい、そうなんです」


嘘じゃないしと思って、そう答えた。


バックミラーに写った良太と篤も


隣の雪乃も頷いていた。


「僕には幼なじみと言える人はいないから羨ましいなぁ。


これからもみんな仲良く大人になってね」


長谷部さんの暖かい言葉には思わず胸がぎゅってなったけど


今ここで泣く訳にはいかないから笑顔で返した。


それに衣麻はもう、泣かないって決めたから。


翔馬がいなくなったと分かった日が


衣麻の最後の涙の日。



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修学旅行から返って来ると


家には聞きなれない泣き声が響いていた。


迎えが衣里ちゃんと瑛太だったことと


最近のお母さんの体調から考えて


おおよその検討はつく。


そっか、修学旅行中に無事、出てきたんだ。


「お母さん!」


衣麻は荷物を玄関に放り出して、居間へと駆け込んだ。