衣麻と僕と俺と私




「自分でするから、衣麻は支度をしなさい」


「・・・あ」


駄目だ、また忘れる所だった。


「うん、して来る。出かける時は声かけてね」


お父さんが頷くのを見て、部屋に戻った。



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“梅雨の時期に修学旅行なんて”


って最初は思ってたけど、案外悪くないかもしれない。


だって、雨が降るのも風情があると思うもん。


なんて、中学2年生がそんなの分かる訳がないじゃん。


「衣麻、写真!」


雨が降ってるにもかかわらず、雪乃のテンションは高い。


今興奮してるのは・・・お寺。


衣麻だって興奮しない訳じゃないけど


雨って好きになれなくて。


やっぱり晴れの時に来たかったと思ってしまう。


「あー、良太ごめん、撮って」


男子は暇そうにしてるけど、何とか付き合ってくれてる。


そういえば、最近気付いたことがある。


男子の声が低くなって、背も伸びたみたい。


衣麻は特別小さいけど雪乃は小学校から標準的な体型。