衣麻と僕と俺と私




五月晴れの中吹いた心地よい風に乗って


翔馬の声が聞こえた気がした。


気のせい、だよね。


きっと、ちゃんと準備をするように


って張り切ってるからだ。


衣麻には前科があるから。


思い出したくもないけど、小学4年生の時のお盆のことね。


「あ、お父さんおはよう」


家の中に戻ったらお父さんが起きて来てた。


まだパジャマ着てるけど、寝ぼけてるのかな。


「んー、おはよう」


寝ぼけてはないみたいだね。


「瑛太はさっき出かけたよ。


お父さんはお母さんの所行くんやっけ?」


「うん。・・・腹減った」


そんな眠そうに言われても、笑っちゃうよ。


「ちょっと待っとって。衣麻が何か・・・」


「ストップ!」


びっくりした。


お父さんったら急に大声出すんだもん。


きっとご近所さんにも聞こえてるよ。