衣麻と僕と俺と私




「あのね、衣麻・・・」


今の休み時間は20分休みだから、まだ5分はある。


時計で確認してから、衣麻は翔馬に向かって口を開いた。


「夏休み、翔馬と遊べるの楽しみにしとったんよ。


やのに、ほら。全部消すことになってしもたん。


このままやったら、夏休み翔馬と過ごせんなる・・・」


“ほら”と予定が翔馬で埋まった計画表を見せる。


翔馬は一瞬びっくりしたようにのけぞったけど


すぐ真剣な目で見てくれた。


「衣麻、心配せんで大丈夫」


翔馬は計画表を衣麻の手から離すと、机の上に置いて顔を近づけて来た。


翔馬の可愛い顔がだんだんと衣麻の顔に近づくもんだから


衣麻は焦った。


だって、翔馬とは小さい頃からずっと一緒だけど


こんな至近距離は初めてだもん。


「こんな計画表ちゃんと守る奴なんかおらん。


書くだけ真面目に書いとけ。心配せんでも僕が遊んじゃる」


目的地は衣麻の右耳だったみたいで、翔馬はそう言って顔を離した。


1人で焦って恥ずかしいな。


だって、そんなことある訳ないけどキス、されると思ったもん。