衣麻と僕と俺と私




だったら何も見られてないし聞かれてないか


良かった。


「体調不良なんかじゃなかったろ?」


段差の端に腰を下ろしてた衣麻の隣に


良太も座った。


良太はもしかして、エスパーか何か?


「俺ら今まで恋愛とか関係なかったもんね」


あ、良太も“俺”になってる。


「で、どうすん?」


どうするかって言われても、困る。


だってこんなこと当然だけど人生で初めてで


どうすれば良いのかほんとに分からないんだもん。


「衣麻、そういうの分からんもん。


急に“好き”とか“付き合って”とか言われても困る」


正直、これが本音。


きっと斉藤くんはものすごく勇気を出して


衣麻に気持ちを伝えたんだと思う。


だけど、衣麻からすればそれはまるで暗号で


理解できない。


「良いと思うよ。


俺は、衣麻がそれで安心した」