衣麻と僕と俺と私




“衣里ちゃんはどうやったんやろ”


ふと思ったこと。


衣麻が知る限り


衣里ちゃんは毎日学校が楽しいって言ってた。


衣麻は勝手に部活も教室もどちらも楽しいんだ


って思い込んでたけど


もしかしてそれは違ったのかもしれない。


「あ、時間。俺らグラウンドの掃除やけん。


じゃーね」


航平が代表して言って、男子は靴箱の方向に消えた。


“俺”か。


ついこの間までは“僕”だったのに。


もしかしたら翔馬も“俺”に変わってるかもしれない。


だって、地名を聞いた感じ都会っぽかったし。


“僕”なんて言ってたらからかわれそうだもんね。


「ユキらも行こっか」


雪乃に促されて衣麻も立ち上がった。


「うん」


衣麻たちは音楽室の掃除。


だから男子とは反対方向へと足を進めた。