玄関のドアを開けて、まぶしさに手をかざす。


まだ4月だっていうのに、まるで夏だ。


今日は学校に着いたら上着を脱ごう。


「衣麻ねぇ、忘れ物ないん?」


衣麻の後ろで靴を履いてる瑛太が偉そうに言ってきた。


3年経っても瑛太の態度はそのまんま。


どうかと思うけど


衣麻の抜け具合もそのまんまだから言い返せない。


「大丈夫・・・・・・じゃなかった。楽譜!」


「ほんとに中学生?」


瑛太の嫌味が右耳に刺さる。


そんなこと言われても


衣麻は衣麻なりに頑張ってるんだけどな。


翔馬がいなくなって、少しは成長したと思ってたのに。


「ちょっとは落ち着いて・・・」


あ、お母さんのお説教が始まっちゃう。


早くしないとみんなに置いてかれちゃう!


「ごめんお母さん!今日は部活5時半までだから!


行ってきまーす!」


言葉は軽いけど心では深く謝りながら家を飛び出した。